FC-DECX物語 第1話 〜桃園の誓い〜

「我ら!生まれた年、日は違うけれど、ピッチで倒れる時は、同じ年、同じ日であることを願わん!」
浅草の、桃の花びらが舞う木の下で、僕たちはあの日、誓った。
ずっと、共に、戦おうと。










あれから4年が経った。
僕らは、別々の道を歩むことになった。
FC-DECXの代表であり、キャプテンであったトムは、謎の商社で働く電光石火の営業マンになった。
副キャプテンであるおっきいのは、実家の中華飯店で腕を振るいながら、裏ではパソコンの製造・販売をも手がけている、兼業マンだ。
時にはDEC-Xの紅一点でもあり、また漢でもあったしまんちゅうは、今や区内の図書館で働くバリバリの公務員である。



そして僕はといえば・・・。
気が付いた頃には、既に藤岡弘探検隊のメンバーになっていた。
今は何故かモンゴルにいる。
伝説のラクシャマシーカという馬を追って探しているらしい。
らしいというのは、番組の趣旨がメンバーである僕にもよく伝わっていないからだ。
だから、本当のところなんてどうなのか分からない。
実はラクシャマシーカなんて馬ではなく、幻のさいたまを探しているのかもしれない。
そうプロデューサーからイキナリ告げられても、文句は言えない。
ここはそんな業界だ。



灼熱のタクラマカン砂漠の下、燃えるようなテントの中で、ふと、あの日の事を想う。
僕らの誓いは、まだ生きているだろうかと。
できるならばもう一度、あの浅草桃園の場所に帰りたい。
想いを込め、握り締めた手の横に、藤岡弘の生足が見えた。


第一話 〜桃園の誓い〜 完

この物語は一部、いやむしろ、ほとんどフィクションです。
尚、登場人物は実在の人物とはきっと、たぶん異なります。