電車男を見る

 前回に引き続き、今回も見ちゃいました、電車男
なんというか、エルメス役の伊東美咲さんはいつ見ても綺麗だ。エルメスという言葉がぴったりな気がしてならない。しかし、それ以上に輝いているのは、主役の電車男を務める伊藤淳史だ。彼は昔、とんねるずのみなさんのおかげですの「仮面ノリダー」に出ていた、ちびノリダーだった。その彼が、今や立派に主役を果たすまでに成長している。まさに時間の流れを感じる瞬間だ。


 それはさておき肝心の内容ではあるが、見ず知らずの他人同士がインターネットの掲示板という一つの媒体を経て語り合う。これが電車男の魅力だろう。「オタクがお姉さまに恋をした!?」そんなんどうでもいい。オタクだって人間だ、恋をするに決まってるだろうが。そんな当たり前の事をとやかく言うつもりはない。重要なのは、見ず知らずの他人同士が、お互いの存在を認識し、そこに在るのだと認めている奇跡にある。


 普段、僕たちは目に見えるもの以外を信用しない。幽霊や超能力にしてもそうだ。何事も、自分の目で見てから、始めて信用できる。だから、目に見えない幽霊や超能力は信じるに値しない。ところがインターネットはどうだ。回線上から相手を自分の目で確認することは不可能だ。にもかかわらず、そこに確かな「存在」を感じるのである。全く持って不思議なことではないだろうか?これを奇跡と呼ばずして何と呼ぶことができよう。


 ドラマでは、そうした互いの存在を認め合い、語り合う場としての2ch掲示板という存在を僕たちに見せてくれる。そこでは誰もが平等の発言権を持ち、しかも参入・退場は自由であるように感じさせてくれる。まさに真の民主主義の姿だといえないだろうか。もちろん実際の掲示板運営は、この手のモノとは相当異なる事は間違いないが、それにしても、互いの物体無しで存在を認め合うことができるのだということを、テレビドラマで流してくれるのはありがたいものである。


 他方で、現在のインターネットを利用した犯罪の増加から、ネットでの匿名性を無くそうだのなんだのが取りざたされている。だが、それは誠に残念なことだ。匿名性があるからこそ、ネット掲示板という場所において、私とあなたという存在を完全に消し去ることができるのだから。それは、まるで宇宙の片隅にでもいるような別の存在となって、私という人間を再確認できる唯一の場所なのだ。電車男もそういった匿名性の中から生まれた。これがもし身元が完全に分かる状態であったならば、また違った結末が待っていたことだろう。そもそも、これだけの人が彼の身に起きた事件に付き合っていたかどうかも謎である。ゆえに、匿名性を奪おうというのは、折角気付き始めたこの奇跡に蓋を閉めて、無かったことにしようというようなものである。


 ドラマ・電車男は、悪者にされがちな匿名性を受け入れやすいものとして認知させてくれる効果があると期待して、今後も楽しみながら見させてもらおうと思う。