中国むかしばなし

そういえば、昔々、中国のある国の王とその隣国に位置する王との間にこんな交流がありました。
隣国の王は、この王にこう言ってきました。
「お前のところの駿馬を1頭くれないか?」
当時、駿馬は大変貴重で高価なもので、これを持つ事が王としてのステータスでもあったわけです。その大事な駿馬を一頭よこせと言われた王は自国の大臣たちに相談しました。大臣のうちの一人が言いました。
「駿馬を譲ってはなりません。これに応じればまたさらなる要求を突きつけてくるでしょう。」
もう一人の大臣が言いました。
「隣国の力はわが国よりも上です。ここは大人しく駿馬を譲るべきです。」
これに王は頷き、駿馬を譲ることにしました。


それからしばらくして、また隣国の王が言ってきました。
「お前のところの美しい妃をくれ。」
王は悩みました。そして大臣らに再び相談しました。
大臣のうちの一人がこう言いました。
「いけません。これ以上要求にのっては相手の思うツボです。」
他の大臣も続けていいました。
「絶対になりません。妃をくれなどと言語道断です。跳ね除けるべきです。」
王はしばらく黙り考えましたが、結局、妃を隣国の王に渡すことにしました。


それから数年が経ったある日のこと、またあの隣国の王が言ってきました。
「お前の領土とわしの領土の間にある砂漠をくれ。」
王は悩み、大臣らに相談しました。
大臣の一人が言いました。
「あの土地はどうせ何の使い物にもならない砂漠です。あげてもいいでしょう。」
王はそれを聞くや否や、持っていた酒盃を投げ捨て、怒鳴りました。
「たとえ美女や駿馬を他国に譲ることがあっても、土地だけは譲ってはならぬ。土地は全ての基礎だ、これを失うは国を失うのも同然。絶対にあってはならぬことだ。」
こう言うと、土地を譲ることに賛成した大臣の首を一刀両断にし、王は隣国へ軍を率いて攻め入ったのです。