ふたしとアジアンレスキュー

ふたしとアジアンレスキュー。
この奇妙な関係で結ばれた二つの連中は、今も俺の下にいる。
どちらも早くどこかに追いやってしまいたかったが、その機会が掴めずにいた。


とはいえ時とともに両者には大きな差が生じ始めていた。
ふたしは歴戦のじいさまパイロットが乗ってくれたおかげで、次第に元の実力を取り戻しはじめていた。それ以降、以前のようにやたらめったら暴れることもなく、非常に従順で言われたことをテキパキとこなす優秀なロボットに生まれ変わってくれた。
一方でアジアンレスキューはといえば、ふたしの再生を尻目にただただひがんではグレていった。
時にはふたしに落書きをしてバカにすることもあった。
商店街でも物を壊すは、やたらめったら騒ぎ立てるわと酷く評判が悪い。
アジアンレスキューの悪さは目に余るものがあった。
かといって、うちから出ていく気配も全く無く、毎日仕事もせずにぶらぶらしている。
いっそ東京湾に流せたら……と思う。


と、ここまで語ったところで、スーツ姿の親父が声をあげて泣き始めた。
俺の話に同情してくれたらしい。
すこぶる満足感を得た俺は、親父に別れを告げてその場をあとにした。
帰り際、辞書を3冊ばかりおいていった。
長い間俺の話を聞いてくれたお礼のつもりだった。