新宿ディーダがくれたもの

新宿ディーダが閉店してからもうひと月ばかりが経つだろうか。
あれから何事もなく日が過ぎているなぁ、なんて思っていた矢先、一通の封筒が郵便受けに入っていた。
それはディーダのマスターからで、中には手紙と共にディーダの権利書が入っていた。


「お元気でしょうか?あれから我々のディーダは様変わりし、今ではすき家になってしまいました。さぞ悔しい事かと思います。これも全てドイツのせいだと思います。ドイツがディーダを嵌めたのです。ですが、今となってはもうどうすることもできません。私は長野へ旅に出ます。探さないでください。いえ、やっぱり探してください。それからディーダの権利書を同封します。ご自由にお使いください。それではまた。追伸:ゴムも売ってください」


ゴムも売ってください、という部分が気になったが、そのまま放置することにした。
とりあえず権利書はドイツには見せず、カナダに売ることにした。
彼らなら高く買ってくれるだろうし、すき家ではなく松屋にしてくれるだろうと思ったからだ。
それならマスターも喜ぶだろう。


帰り際、近所のライオンに追っかけられる。
3丁目の公園まで追っかけられたが、猫をもって撃退した。
その際、猫を貸してくれたホームレスのおじさんに尋ねられた。


貸金業と不動産業、どっちが悪徳かね?」
スフィンクスのなぞなぞか?と思ったが、咄嗟に
「不動産業」
と答えてしまった。
おじさんは、「正解だ」と満足そうな顔で答えてくれた。
意味はよくわからないが、食べられずに済んだとほっとした。