ゼットンとセイヤ、24時の黄昏

ゼットンとセイヤが家を出て行ってからもうひと月とちょいになる。
今は彼らが残していった荷物を少しずつ片付けている。
その作業の途中に出てくる荷物を見て、懐かしさで少し胸が熱くなった。
「あいつらも、案外悪い奴らでもなかったのかもしれないな」
一緒に暮らした期間が長かったせいもあるだろうが、俺は彼らに愛情を感じていた。


だが、荷物の整理は別だ。
今は彼らの代わりに駐車場管理のおじさん(自称スーパー待機警備員)と雑誌社の社員、さらに先日は家庭教師のお姉ちゃんまで泊まりに来た。
だから、あまり汚い部屋は見せられないのだ。
そんな訳で荷物を整理している。
ゼットンとセイヤ、二人とも元気にやっているだろうか。
と、ふとテレビをつけたら二人が出ていた。
しかもものすごいブルジョアな格好をしていた。
「ありがとうありがとう!」
と言いまくり、周囲にニタニタと笑顔を振る舞っている。
何が起こったんだ……。
と一瞬茫然としたが、次の瞬間全てがわかった。
振り返るとそこには女子高生がいた。
それも一人や二人じゃない。床が抜けるんじゃないかと思うほどいた。


どうやらゼットンとセイヤはグループを組んで歌手としてデビューしたらしかった。
すぐに人気のデュオとなり、CDはバカ売れ。数週間1位を独占したらしい。
いやはやこんな事なら整理しないでそのまま残しておけばよかった。
とは思うものの、まあ仕方ない。
ゼットン&セイヤ記念館でも作ってしばらくは入場料でもとることにした。