新しい住人

はじめて彼を見た時、建築関係の人かな?と思った。
その風貌がいかにもそれらしさを匂わせていたからだ。
だが訊いてみれば、不動産関係をやっているらしい。
しかも、かなり儲かっているそうだ。
ここだけの話、土地を買って転がすだけで数百〜数千万の儲けが出るのだとか。
そりゃーすごいと思ったが、実のところ彼の本業は賃貸業だった。
土地ころがしは彼に言わせるとあくまでも遊びの範疇なのだという。
土地転がしのギャンブル性の高さに比べて、賃貸業は安定した収入が見込めるとのことだった。
一体どのくらい?と興味本位で訊いてみたところ、彼はあっさりと答えてくれた。
なんとその額、1億〜だと言う。
家賃踏み倒しというリスクは?と訊いてみたが、うちの物件では都市伝説に近いくらい無いよと、これまたさらっと言われた。
いやはや不労所得万歳とはこのことだろう。


そんな彼だが、凄まじい借金を同時に背負っているらしい。
らしいというのは彼から聞いた話ではなく、彼の友人のダーヴィッド(国籍不明)から聞いたことによる。
なんでも銀行から借入した金で不動産を買いあさっているらしい。
だが、どこの銀行が出資しているのかは全くの不明で、彼の主要支援者として名を占めているフリードリッヒグラインという人物や?モスコボステスプラン、?アーキテクトサンライズマルチスパナー、Maiden Future and Culture Holdings、Gullfsteiner Grossopetant Co, Ltd、といった企業はどうもダミー臭いという噂だった。
まあ、うちとしてはきっちり家賃を払ってくれれば別にいいのだけれど。
そんな訳で彼が住み始めた。
流石お金持ちなだけあって、金払いが良い。
先日、まんじゅうをあげたら一万円くれようとしたので断った。
世の中全く奇妙なものである。