待てよ、おい待てよ!

「なんでどうしてコサックダンス?どうしてこんなになったんだ?」
1万人は入るかと思われる巨大なダンスホールで、男は数十名のダンサーと共にすっぽんぽんのままコサックを踊っていた。
どうしてこうなったのか自分でも全く記憶がない。
気がついたらこうしてステージの上でコサックを踊っていたのだ。


1万人の拍手がホールに鳴り響く。
どうやら一踊り終えたらしい。
頭で思うこととは関係なく、身体が自然と動く。
男は隣にずらっと一直線に並ぶ他の男たちと同様にぴったりと呼吸を合わせ、退場口へと駆けていった。
その様は、まるで軍隊のランニングさながらであった。


「おつかれさん」
舞台裏で男たちに声をかけて回っているお姉さんがいた。
なんというナイスバディだろうか。
男は思わず生唾を飲み込んだ……はずだった。
しかしそれは頭がそう言っただけであって、実際には生唾などまったく飲み込んでいなかった。
脳裏に響くゴクリという音を聞きながら、男は自分の意志とは無関係に走りだす自分の足を見た。
足は信じられないくらいの速さで動いていた。
まるでタコのようにうねうねとだ。
男は気持ち悪くなり、意識を失った。