MADE IN Saint Christopher and Nevis

linne2005-07-27



足軽山で特訓を終え、ようやく地上に降りてきたら、時代は平成になっていた。
「こんにちは。平成の異端児、ジョージ・ウィリアムス三世です。」
おれっち、決して時代に取り残されたわけではなかとです。
時代が俺っちを呼ぶまで足軽山にて修行していたとです。
そして今日、その日が来たとです。
アスファルトで埋め尽くされた大地にどしっと足をつけ、今一歩前に踏み出たとです。
でも、目の前に広がるのはでっかいでっかい建物ばかり。足軽山にはかなわんけれども、モリスケ(クマの名前)よりもでかいとです。
しかもそこにぶら下がっているのは横文字だらけの看板。
正直、読めなかとです。
時代の流れを感じ、ちょっぴりセンチメンタルなのです。


とりあえず目の前の家に入ることにしたとです。
ここ、インターネット喫茶っていうらしいのです。
今、かなり流行っているらしいとです。
中に入ると、長方形の台の奥に立つ若い女性の店員さんが話しかけてきたとです。
「はじめてですか?」
「あなたとははじめてです。」


なんだか、ニヤニヤと笑われたとです。



とりあえず、店員のお姉さんの勧めるがまま、ラグナロクオンラインの1dayチケットを買ってみたとです。何に使うのかわからんとです。
座席を決めた後、伝票を渡されさらに店の奥に入ると、今度は本がたくさんあったとです。
俺っちにはよくわからないものばかりなので、目と目が合ってしまったボボボーボ・ボーボボというのを手にとってしまったとです。
第一話は「毛」だったとです。
意味がわからんとです。


ちょっぴり喉が渇いたので、自動販売機なるカラクリ機械から飲み物を頂戴したとです。無口な奴だが、出っ張りを押すと飲み物を出してくれる、なかなか気前のいい奴だったとです。
飲み物を持ち席に戻ったら、退出の時間が来たとです。なんだかあっという間の出来事で、まるで夢の中でモリスケ(クマの名前)と戦っているようだったとです。
「ありがとう」と言って店を出ようとすると、何故か引き止められたとです。
どうやらお金が必要だそうで、そのまま出ていくなと店員のお姉さんが俺っちの脇を引っ張るとです。
もてる男は辛いとです。
「すまねぇ。どうしてもいかねばならねぇんだ、不二子。」
お金なぞ一銭も持ち合わせていない俺っちには、足軽山に篭もる前、町一番の酒屋で見た光景を真似てみるくらいの事しかできなかったとです。
思いっきりなぐられたとです。
平成の女性は凶暴になったとです。




今は、このお店で雑用係をしているとです。
「遊んだ分は身体で返せ」と言うのですが、俺っち、遊んだ覚えは全くないのです。
飲み物を飲んで、見知らぬ変な本を手に取ったくらいなのです。
だからふと思ったとです。
店員のお姉さん、絶対俺っちに気があるぞ、と思ったとです。
つまりこれは、平成の恋物語のはじまりはじまりなのです。