隠れた失業者の実体に迫りました

「信じられないことだが、この日本という国には数多くの隠れた失業者がいるらしい」
そんな話をファミレスの駐車場でインドから来たというタジリ・ラーニャマルさんとイランから来たというメコスケル・ガバディさん、そしてイギリスから留学中のボブ・ハスキンさんとした。
彼らは一様にかぶりを振りながら、「アエエナーイ!」と叫んでいた。
その様子を見ていたのであろうレストランの客どもが、一世に店を飛び出して駐車場になだれ込んできた。
そして鞄やポケットから携帯を取り出しパシャパシャと撮影を始めた。
なにかのドラマの撮影だとでも思ったのだろう。
俺が恫喝すると、さっと客どもは逃げて行った。


「んで……」
俺は本題を切りだそうとした。
すると彼らも俺につられて、それぞれの顔を寄せ合いながら言った。
「井手……」
三人ともあまりに真顔で言うもんだからどうしていいか分からなかったが、俺以上に分からなかったのは突然自分の名前を見知らぬ外国人3名に呼ばれた井手らっきょその人だろう。
彼はぽかんと口を開けたまま、みかん箱を抱えていた。
「なんでもないんです。大丈夫です。僕たちは安全です」
何故か意味不明の日本語になってしまったが、井手さんは笑顔で頷いてくれた。
なんていい人なんだろう。
その優しげな表情に感動しながらタジリの方を振り向くと、彼はもうその場にいなかった。
タジリどこいったの?」
ボブに聞くと、タジリは沖縄に帰るといって成田へ向かったらしい。
「どうして成田……」
と言いかけた時、体毛にまみれたボブの太い腕が俺の口をふさいだ。
「シャーラップ!ジャップ!」
何故か蔑称で呼ばれた。
むかついてボブの毛を毟ったら、泣いて謝ってきた。
「今、ゴメスがいたから、ゴメスがいたから」
必死に弁明するボブだったが、俺にはそのゴメスという者が何者なのかいまいちわからない。
そこで今しがたタジリの代わりに来たという、タカシに話を聞いてみた。
タカシは日本国籍を持っているが、どう見てもアフリカ系だ。
日本語も喋れない。
極めつけは、彼の好物は女子高生だということだ。
だが、最近では男子高校生にも興味を持ち始めているという。
その劇的な変化を彼は喜んでいる。