翻って、本日は雨

ティーチャーがこないぞー!」
ティーチャーはどこだー!」
「うぇるかむ、てぃーちゃ!」



教室に響き渡る怒号。
ひっくりかえる花瓶と泣き出す女子生徒。
一体何が起こったのかわからず右往左往する男子生徒。
今まさに、そこは戦場であった。
レポート用紙が飛び散り、小倉優子も真っ青なこりん星からの使者が教室の窓をドンドンと叩いている。それは千昌男そっくりの顔をした男で、しかしホクロの位置だけが顎にずれてはいたが、やはりどこからどう見ても大竹まことであった。男は無症状のまま、ひたすら窓を叩き続けていた。
このこりん星人の襲来に、教室は恐怖のどん底へと落とされていた。




生徒諸君!


そのとき突然、校長が険しい面持ちで教室に入ってきた。
手には沢山の花束を持ち、しかし背広はボロボロに破れて、肩の部分では地肌が見えていた。校長はよたりながらも言った。


「我々は既にこりん星人に包囲された。このまま大人しく降伏するか、それとも・・・。」


「先生、降伏なんぞしませんよ。我々はまだ闘えます。」
髪の毛を半分こりん星人にもってかれた男子生徒がモップを片手に意見した。


「もう無理よ!体育の小柳先生も、ごきげんよう!の小堺先生もやられたのよ!私たちだけで何ができるっていうのよ!もう降伏するしかないのよ!」
しかし、女子生徒の激しい言葉に教室は静まりかえってしまった。


沈黙する教室の中でただ一人、22世紀からやってきた男・メメント森だけが薄ら笑いを浮かべていた。


「僕がここに存在する限り、人類はコリン星人に破れたりはしない・・・。」




彼の呟きに教室中が湧きかえった。
「まだだ、まだやれるぞ!」
どこからかそんな声が上がった。
「筆記用具でも何でもいい、武器になるものを身に着けておくんだ!」
誰かがそう叫んだ。
生徒たちの様子を見た校長は、目に涙を浮かべ、手を大きく上に振り上げた。
そして叫ぼうとした。
大きく息を吸い込んで。
何かを言おうとした。



校長は、倒れた。
花束は握ったままだった。
彼の背後に、田嶋陽子そっくりのコリン星人が棍棒を持って立っているのが見えた。