マタニティー&フルモンティー 〜魅惑の放課後、あなたに届けるベストショットプリマダム〜


東京の裏通りにある古めいたバー”ヨシモト”。そこは男と女の出会いと別れの場であった。今日もまた一組のカップルがここを訪れる。



そこでダンディーは呟いた。
「俺の・・・俺の財布に君への答えが入ってる。」
「財布?あなたの?あなた、財布なんていつから持ち始めたの?・・・以前は財布なんて持ち歩くような人じゃなかったのに。・・・もう私が知っているあなたじゃないのね。」
プリマダムは切なそうな表情を浮かべ、ダンディーの胸元にある財布へそっと手を忍ばせた。
「おっと、お嬢さん。お手が胸毛に触れましたぜ。」
胸毛に触れられたダンディーが派手にびくつく。
「触りたくて触ったんじゃないわ。あなたの胸毛が長すぎるからいけないのよ。それに、胸毛に触らずにどうやって財布がとれるというの?」
「君は何も分かってないな。確かに俺は財布の中に君への答えが入っているとは言ったが、何も君に取ってくれと頼んだ憶えはないぜ?」
「あら、失礼。じゃあ取ってくださるのね?」
「いや?」
「どういうこと?」
「・・・それが答えさ。」
しばしの沈黙だった。
ヨシモトのマスターが、エレキコミックのノースリーブネタに大笑いした瞬間、プリマダムが大声をあげて泣き出した。
「ひどいわ、ダンディー。」
「・・・・・・。」
ダンディーは無言だった。これ以上何も喋りたくはない、そういった様子だった。
涙を拭いたプリマダムが一人呟く。
「・・・私たち、もうおしまいね。」
「・・・ああ、おしまいだ。」
「昔のあなたはとても優しかったのに・・・。」
「さあ、駅まで送るよ。それが本当の最後だ。」



駅でプリマダムと別れた後、ダンディーは再びバー”ヨシモト”に戻った。
少し屈まないと入れないほどの窮屈な入り口を抜け、マスターの前の席に座った。
「・・・マスター、その髭、その身体、須らく愛してるよ。」
「・・・ウホッ。」


禁断の愛に見守られながら、今日もまた東京の夜は更けていく。