ハンカチ王子 VS 傘王子

結局私は、多少濡れながら進む方を選択した。
というのはつまり、一部が折れ、半壊状態にある傘を差しながら行くということだが、当然、折れた場所からは容赦なく雨が吹きつけてくるわけで、ある程度濡れることは覚悟しなければならなかった。だが、何も差さずにこのまま進むよりは幾分かマシだと思った。


しかし、そうは問屋が卸さなかった。
既に半壊状態にある傘の耐久度というのは、怒りっぽいオールバック頭の課長の機嫌よりも脆いものであった。だからこそ、そのような傘を手にする私は、既に自転車とはいえ歩行者とほぼ同等のスピードで走ることにしていた。風の抵抗を弱める、そんなつもりだった。


だが、そこへ左右からの突風が忽然として現われ、私に、いや私の傘に襲いかかってきた。
この瞬間、自分でも驚くほど、私の右手からびっくり手品ショーが飛び出した。
傘はプゲラ!と音を立て、一瞬で棘のあるカリフラワーのような姿になった。
・・・そこにいた、皆が・・・見ていた。
私は恥ずかしさのあまり、壊れたカリフラワーで顔を隠しながら進んだ。


この光景は、その後、私が大学につくまでの間中、目撃されたことだろう。
もしかしたら、明日の新聞でこの新種の動的カリフラワーに関する社説が載るかもしれない。
「あわれなカリフラワーが、首都高速を爆走した。」
涙なしでは語れない、これは傘と私の切ない出来事だった。