ねぇ、パパ。アポストロフィーってどんなトロフィーなの?

「それはね・・・こんなトロフィーさっ!」
父親の剛は娘の萌の目の前でバスタオルを振りほどくと、すっぽんぽんで踊りはじめた。
その父の後に続き、「きゃっきゃ」と騒ぐ萌とは正反対に、買い物から帰ってきた母親の良子は愕然として床にスーパーの袋を落とした。袋から、卵の割れた音が聞こえた。
「あなた、何やってんの!」
甲高い声で良子は叫んだ。
「いや、そのアポストロフィーを・・・。」
すっぽんぽんのままの剛は、ばつ悪そうに答えた。
娘の萌はそれでもまだ楽しそうに、剛のケツを叩いては踊っている。
「馬鹿やってないで服着なさい!」
「うへぇ!」



あの頃は、バカバカしくて、だけど楽しいそんな毎日がずっと続くと思っていた。
剛が会社をクビになるまでは。