グラスワンダー、再び

だが、秋葉原を抜けたところで、彼のプランは狂った。
気づけば、私達はニューヨークヤンキース松井秀喜が住んでいるらしい噂の高層マンションの下にいた。目の前に広がるのは隅田川。後ろに広がるのも隅田川
彼は言った。
佃島にはいけなかったね・・・。」
「うん・・・。」
計画が狂い、目的地までたどり着けなかった悔しさを思い、私は彼に同調した。
せめて、今僕らはどこまで来たのか、佃島まであとどのくらいだったのか、それが知りたかった。
私は歩道脇に立てられた地図看板を見た。
地図には、佃島の文字があった。
道路を挟んだ反対側、そこが佃島だった。


佃島・・・だ・・・。」
彼の目から大粒の涙があふれた。
私も、泣いていた。
僕らは気づかぬうちに目的を完遂していたのだった。
感動に包まれた僕らは、自分達の衣服がジャージであることすら忘れていた。