お財布に潜むもの

先生「これから、日本語のレッスンをはじめます。みなさん、私の後に続いて丁寧に発声してください。」



先生「私は、牛皮の財布を持っています。」
生徒「私は、牛皮の財布を持っています!」
先生「私の財布には1万円すら入っていません。」
生徒「私の財布には1万円すら入っていません!」
先生「私の財布は消費者金融のキャッシュカードで埋め尽くされた状態です。」
生徒「私の財布は消費者金融のキャッシュカードで埋め尽くされた状態です?」
先生「収入と支出のバランスを大切に。」
生徒「しゅ、しゅう入と支出のバランスを大切に・・・?」


生徒「・・・なんか変じゃね?」
生徒「変だ変だ。」



先生「愛があれば臓器だって売れる。」
生徒「愛があれ・・・えっえっ?」


重い空気が教室中を駆け抜けていた。
中には泣き出してしまう子さえもいた。
だが先生は一人、謎の例文を読み続けた。
まるで何かにとりつかれたかのように、一人・・・。