秋の匂い

ポテトチップが無性に食べたくなって、おかしのまちおかまで買いにでかけたのはもう二週間近く前の話。あの頃はカールで満足していたけれど、それを食べつくした今となっては何処となく口元が物寂しい。されどポテトチップの袋は、触れるたびに「カロリーすごいよー♪」と警告音を鳴らす。
その袋を開けるのか開けないのか、それが問題だった。


食欲の秋。
そんな言葉に騙されて、ひたすらお菓子を食べまくった。
お菓子を食うくらいならご飯を食べた方がいいのは十分にわかっているのだが、経済的理由がそうさせてくれない。ご飯なら平均300円以上はかかるが、お菓子なら70円で済むんだ。カールは・・・安いんだ・・・。そしてカロリーも思いのほか豊富なんだ・・・。
しかし、そういった状態も長くは続かなかった。
カールばかり食べてたせいだろうか、頭が働かない。
いつだってぼーっとしている。
何かを始めようと思っても、口元が動きだして止まらない。
唇がカールを欲しがっているんだ。
それに気付いた時、既に私の手元にカールは無かった。
カールは巣立っていったのだ。
泣く私を慰めるかのように、ポテトチップスの袋が輝いていた。
だが、それは究極の決断のように思えた。
秋太りにはなりたくない・・・。
ましてや、ビリーズバンドを持っていない私にとって、この輝きはまぶしすぎるものだ。
ああ、なんということだ。
気が付いたとき、既に私の手は袋を開けていた。
香ばしい匂いが、部屋中に溢れた。


ポテトチップスを摘みながら、思った。
「今年こそ、断食。
 ヨガの境地へ。」