積読LV27

城門の前には誰もいなかった。
普通このあたりには兵士が二人ほど立っているはずなのだが、その姿も見当たらない。
よほどの緊急事態があったというのだろうか。
僕はとりあえず中に入ってみることにした。


門に手を触れたとき、何か嫌な感じがした。
咄嗟にその場から飛びのき、距離をとってから眼を凝らして城門を見た。
すると閉じられた門の隙間から、紫に染まった空気がシュゥと溢れてきているのが分かった。
開けたら最後、ウサギか何かに変身させられてしまったに違いない。
飛びのいて正解だった、と思いながら息をふぅっと吐いた。
そのとき、僕の足を何かがつついた。
何者かと思い足元に目をやると、そこには犬がいた。
よく手入れのされた感じの体長60cmほどの犬で、毛色は美しい茶色だった。
「売ろう、いい金になる」
僕は犬を抱いてサマルトリアを後にした。