もちのき小学校前、3歩手前。ドルイド発見。


気が付けば自転車をこいでいた。
必死にこいでいた。
足立区のハリーポッターと呼ばれる男に会うために、僕らは必死で走った。
千住大橋に差し掛かる頃だろうか、雨がぽつりぽつりと降って来た。
やがてその雨は大粒となって僕らに襲い掛かる。
「もうだめだ、雨宿りをしよう。」
私の前をゆく、ちょっとハードボイルドな感じの、しかしあだ名はピカチュウに似ている彼に話しかけた。
「うん、そうしよう。」
思いのほかやわらかい物腰で彼は答えてくれた。



そうして僕らはとある店先の軒下で、雨が弱くなるのを待った。
幾許かの時が過ぎただろうか。
そこへ一人のおばちゃんが現れた。
このおばちゃん、どう見てもガメゴンロードに似ている。
が、恐くて、面と向かってそんなこと言えやしない。
「あなた、ガメゴンロードに似てますね。」なんていったが最後、ぶっとばされるかもしれないからだ。
一見すると弱そうに見えるこのおばちゃんも、何気に数多くの修羅場を潜り抜けてきた顔をしている。何人もの勇者をマットに沈めてきた顔だ。
僕らはおばちゃんを見ないように見ないように・・・そっとその場を去った。
雨はもう大分止んでいる。
今が逃げるその時だった。



さて、それからさらに自転車をこぎ続け、僕らはサイタマ近辺までやってきた。
ウェアハウスの前まできたとき、足立区のハリーポッターにメールを送った。その内容はこうだ。
「もうすぐ着くと思いますので、リムジンかテムジンのどちらかで迎えに来てください。」
すぐさま返事が返ってきた。
「至急テムジンで駆けつけます、今どこ?」






しかし、いくら待ってもテムジンはこなかった・・・。
僕らは、今ここにいないテムジンの面影を思いつつ、泣いた。
そしてまた再び走りだした。