海パン刑事


「パンツなんてあんな暑苦しいもんは、はいていられない。」
それが高校生の頃の俺のポリシーだった。
思い起こせばあの頃の俺は毎日がノーパンだった。
周りの奴らは皆、俺がノーパンだったことなんて気付いていないだろうな。仕方あるまい。高校生だったとはいえ、俺は潜入捜査のプロだった。奴らが気付かないのも無理はない。



高校を優秀な成績で出た後、俺は警察官になった。
警察官はかねてから念願の職業だっただけに、その喜びもヒトシオだった。
この話をどこで聞きつけたのか、田舎のおじさんが就職祝いのプレゼントを送ってきてくれた。
中に入っていたのは、海パンだった。派手な柄の青い海パン。
「俺はパンツなんてはかねえんだっ!」
そう言って、おじさんからもらった海パンを激しく地面にたたきつけたのを今でもよく覚えている。



警察官になってから間もなく、同じ部署に配属された同期の仲間に誘われて海へ行くことになった。あの時、地面に投げ捨てたおじさんの海パンを掴み、俺は海へと向かった。流石にレディの前で男前になるのはまずいと判断したからだ。
そこで俺は運命的な体験をした。
白い水着の美しい女性。
麦わら帽子が良く似合う子だった。
その彼女が俺の海パンを見つめ、一言呟いた。
「その海パン、格好いいですね。」
彼女から言われたその一言が、その後の俺の運命を決定付けることになった。



「初恋と海パン」
薄れ行く意識の中で、今はっきりと思い出す。
あの子の声、あの子の顔、あの子の麦わら帽子・・・。
ほんとうに・・・パンツをはいていて良かった。
ほんとうに、ほんとうによかった・・・。
おじさん、ありがとう。
またパンツ、ください。