ここはオランダ

「ギャグではない。」
誰かが耳元でそう言った。右手で耳を塞ぐと、ボクは再び地図帳を広げた。さあ、空想の世界へ出発だ。妄想と言うと聞こえが悪いが、空想というとそう悪いイメージがないのはなぜだろう・・・。




ここはオランダ。
風車とチューリップの特産地だ。
フローニンゲンに到着したボクは、一人のおじいさんに出会った。おじいさんはなにやらごにょごにょとボクに話しかけてきたが、何を言ってるのかわからないので、「お前のかーちゃんバルディビエソ」とジェスチャーで訴えてみせた。するとおじいさんはニコニコしながら一枚の紙切れを手渡してくれた。そこには風車の作り方なるものが描かれてあった。


「風車の育て方はいたって簡単。まずは原寸大の木をポルダーに埋める。あとは数分間、体育座りのまま眺める。そうしてうまく風車の芽が生えてきたら、そのままチューリップを脇に添える。このとき重要なのは左手は添えるだけだということだ。また、手ぶれ補正はないので注意が必要である。」



なるほど分かりやすい解説書だった。
紙切れを見せてくれたおじいさんに礼を言おうと、彼のいる方向を振り返ったが、既にそこには誰もいなかった。
「オランダのおじいさんはやさしい。」
そう呟くと、私はスケベニンゲンへ向かうため汽車に乗り込んだ。