ロンドンチャペルで会いましょう♪2


サレアーニオ「おい、まて。行くなタクシー。」
モーグリオ「行ってしまったね・・・。愛には弊害が多いと聞く、これもまたそういうことなのだろうね、サレアーニオ。」
サレアーニオ「ええい、タクシーはやめだ!それよりほら、あそこを見ろよ、モーグリオ。子供が三輪の車に乗っている。あれを貸してもらおう、あれなら君でも十分に乗りこなせそうだ。(子供に向かって)・・・やあ、僕の名前はサレアーニオ、利根川あたりでは鮒釣りの名手として有名なんだ。今日は君に頼みがあってきた。君の、そう、その三輪の車を貸してくれないか?お礼はそうだな、僕のポケットを見てごらん。うーん、それじゃあだめだ。もっと覗き込まないと。ほら、そこだよ、その奥さ。」


”ズシュ。”


サレアーニオ「落としたぞ、モーグリオ。」
モーグリオ「やってしまったのだね、サレアーニオ。愛に先走る僕のために・・・。」
サレアーニオ「さあ、お別れだよモーグリオ。君はこの三輪の車に乗って彼女の元へ向かうんだ。君が、うまく愛を告げられるよう祈っているよ。見ろ、夕日が!まるで僕らの背中を押してくれているかのように?あぁ、あの坂道から夕日が手を伸ばしてくれている!」
モーグリオ「僕にも見えるよ、サレアーニオ。しかし、あの夕日の先に僕の待つ人が?」
サレアーニオ「それは僕にも分からない。君が恋をしたおばさんは、今頃スーパーで旦那と娘の夕食を買っているのかもしれないのだから。」
モーグリオ「待ってくれ、サレアーニオ。今、旦那といわなかったかい?」
サレアーニオ「おお、言ったとも。旦那さんだ、亭主さんだ。いつもは会社の付き合いがあるからといって帰宅が24時過ぎになると誤魔化してはいるが、その実、会社を出る時刻はきっかり18時。だからとって24時までの間、社内の女と連れ立ってどこかへ行くという助平親父さながらの素行を見せるわけでもなく、彼の行動はいたって平凡。そうして24時までの退屈な時間を、ヨドバシカメラマッサージチェアーで揉まれて過ごすのさ。」
モーグリオ「つまり、僕が彼女のステディになれるのは、彼が帰宅するまでの間の6時間なんだね、サレアーニオ。」
サレアーニオ「さすが南海キャンディーズしずちゃんの魅力に打ち勝った男だ、非常に物分りが良い!」
モーグリオ「これがシンデレラな男の宿命なのか?愛する女と会おうとも、24時の鐘を聴いてしまえば、それ、それまで。あとはジュエルがまってるさ、というわけだね。」
サレアーニオ「もし君がジュエルへぶち込まれることになろうとも、僕は君を必ず助けに行く。それが網走の果てだろうが、米軍基地のど真ん中だろうが、僕は必ず行く。約束しよう、モーグリオ!」
モーグリオ「君の友情には誠に頭が下がる思いだよ。ありがとう、サレアーニオ。」
サレアーニオ「約束の証に一筆書こう。”ナイフとフォークは重ねるな、重ねた時は迎えに行くぞ”。ほれ、この通り。さあ、行くんだモーグリオ。愛はもう、目の前だ。」
モーグリオ「また会おう、サレアーニオ。愛する君に幸多きことを・・・。」



次回:「6時間だけのシンデレラ」をお送りします。