あこがれの貴族ライフ

贅の限りを尽くしたビーフストロガノフ。それが今日の昼食だった。いや、ビーフストロガノフだけではない。キャビアにたらこ、フォアグラにフカヒレ。世界中のありとあらゆる珍味がテーブルの上に並んでいた。
私は思わずフォアグラに手を伸ばした。フォアグラの背に指が触れようとしたその瞬間、隣の皿に盛られてあったズワイガニに一指し指を挟まれた。激痛が身体を襲った。だが、私はすぐさま正気を取り戻し、私を傷つけたズワイガニを頭から丸々と食べてやった。どんな豪華な料理も、そのままむんずと掴んで丸かじりしてしまえば台無しだろう。
だが、そうして食べたズワイガニが、非常にうまかった。
そのカニミソのジューシーさといったら言葉にできない程だった。
男だってやればできるじゃん、そう思った。


何にせよ、女だらけのこの世界でやっていくのには、多少のワイルドさも必要なのである。普段は彼女たちのペットのようにおどけてみせても、時には猛る狼のようにならなくてはならない。それが少数派となった男の生きる道だった。



2255年、東京。
それが僕らの暮らす街だ。